「死ねやぁあああ!」

しのぶの愛刀、紅一文字が、空を切り裂きつつ影(標的)の首元に迫っていた

あと少し、あと少し、捕らえるまでの時間がゆっくり感じられてもどかしい

あと10p、8、6…

「しのぶちゃん、ダメー!!!」

そこにシオンがぎりぎりのタイミングで登場し、突き出した右手の平から突風をはじき出した

風はしのぶを吹き飛ばし、影はそれを見て逃走体制に入る

「シオン!邪魔しないで!」

しのぶの叫びもシオンは聞き入れず

「時は万物の根源にして全ての始まり。0の時律動じりつどう!クロノス・タイム!」

瞬間、シオンの体が淡く輝き、光が解き放たれた

その光は一瞬にして、しのぶと影の時を奪った





「んー!んぐんー!!!」

しのぶは立った状態で木に縛り付けられている。後ろ手に縛り、口は布で覆っている

「あんまり騒がないで。その紐を維持するのは大変なんだからね」

しのぶを縛っているのは淡く輝く空気。魔法だ。とすぐにわかった

「むんん、ぐんむうんうんん?」

「しのぶちゃん、あやめからね、しのぶを止めて って言われたの。だからごめんね」

そして影に向き直る。短髪で、ちょっと鋭めな瞳が印象深い全体的にシャープな男性だった

しのぶと対面するような位置の木の幹にぐるぐる巻きに縛り付けている

「あなた何者? なぜニーグルさんを撃ったの?」

影はふいっと顔をそらす

「話せないの? しゃべれないの? それとも焼かれたいのかしら?」

胸の前にかかげた右手の5指からぼっと炎が揺らめいた

ひっ と短い悲鳴を上げ、観念した、という風にシオンに向き合った

「…俺はロックウェル。ヴァナヘイムを仇とする者だ。つまり、お前等の敵だ」


WORLD RHAPSODY
〜あの時見たのは、いとしい人の姿〜
<第17幕-狙撃者・2->



「なんでヴァナヘイムを怨んでいるの?」

「それは言う必要ない」

「でも、ヴァナヘイム崩壊しているのは見たよね? じゃあ、怨んでいるのは誰に対して? ニーグルさん?」

ふるふる、と首を振る

「ヴァナヘイムだ…。お前等が全部悪い。誰が、とかじゃない、ヴァナヘイムに関係するもの全てだ」

「そう…」

とりあえず、今、ここでどうこうしている場合じゃない、皆に合流しなければ

私じゃ、ヴァナヘイムの情報に疎いし、ニーグルさんの容体も気にかかる

「とにかくついて来て貰うわ。ニーグルさんやあやめちゃんの意見も聞かなきゃ」

「どうせ話を聞いたら殺すんだろ!? だったら今すぐ殺せよ! さっさと殺せ! 俺の存在はお前等の不利益でしかねえんだよ! 殺せ!」

「お前等が悪いんだ…アルパスなんか生み出すお前等が悪いんだ…」

「むぐあんんあんうぐうう!? んーぐう! んおん! んっへんっへ!」

しのぶが暴れだした。何か言いたいことがあるらしく、必死に、暴れている

シオンは布を取る、と堰を切ったかのようにしのぶの声があふれ出した

「なんであんた! ニーグルさんを撃ったの!? なんでヴァナヘイムを怨むの! なんで」

そして一呼吸おいて、力の限り叫んだ

「なんで部外者のあんたが、アルパスのこと知ってるのよ!!!」

それを聞いて、ロックウェルは一瞬悲しげに目を伏せた、がすぐに眼力を取り戻し

「俺の母親は」

きっとにらんだその目は、シオンもしのぶも捉えていない。見えない敵を見ている

「俺の母親は、アルパスの実験体にされたんだ…!」



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